今日も酒を言い訳に。

メンヘラの恥ずかしい毎日

客にレイプされた日のこと

数ヶ月前まで風俗嬢でした。

業種は性感エステ。お店にもよるけど、マッサージと手こきが基本サービスで、キスや、受け身(手マンとかクンニ)がないところが多いです。

キスが無理だった私は、そういうお店でしか働けず、ずっとエステの業界で働いていました。

 

ある日、スカウトに声をかけられました。

私はスカウトに声をかけられると必ず「アベ○万稼いでて、キスなし、受身なしでそれより稼げるなら紹介してください」と言っていました。何様って感じですね。

そう言うと基本は「ソープなら」とか言われるんですけど、その日声をかけてきたスカウトの吉田くん(仮名)は違いました。「頑張らせてください!死ぬ気で探します!」それを聞いて、LINEを交換し、本当にそれが可能な条件のお店を探し出してくれました。びっくりしました。

「ただ、高級店で、面接受かるかはお姉さん次第になります」

そう言われて、(まぁ落ちるかな)と思いながら面接に行くと、採用されて、凄く嬉しかったです。

顔が良いわけでは無いので、太っていない事と「そのサービス内容なら大丈夫なので、なんでも頑張ります!」と言ったことが決め手だと思います。

風俗の面接は普通は10分程度で終わるのですが、そこの面接は1時間あり、店長と色々なことを話し込みました。

「私はキスや受身はできません」

「ちゃんと断っていただけたら大丈夫です」

「下着はサルートでないとダメですか?」

「最初は普通のTバックでいいです。お金が貯まったら揃えてください」

「写真撮影は○○日にしましょう。講習はこの日で」

とにかくきっちり話し込みました。向こうも本気でした。頑張ろうと思えました。

 

真面目に風俗をしていたので、頑張ろうと思って出勤した初日、まずキレられました。

「その化粧なんやねん。そんなんスッピンやん!」

意味がわかりませんでした。面接の時と同じ化粧でした。面接の時の店長とは思えない言い方でした。

「うちは10人受けて1人受かるか受からんかの店やねん!意識低すぎるねん!」

泣きたい気持ちを堪えました。そんなに化粧が気に入らないなら面接で落としたらいいのにと思いました。

けれどお客様に会う前に泣くなんて、そんなことできません。死ぬ気でめちゃくちゃ濃い化粧をし直しました。馬鹿みたいなアイシャドウ、マツエクの上からマスカラ、おてもやんみたいなチーク。ウケる、しか感想出ない化粧でした。けれど仕事なので仕方ありません。

 

「キララちゃん、予約です。車に乗ってください」

車に乗りこみ、お客様の所へ向かいました。

最初のお客様はレオパレスに住む若い男性。ここは本当に高級店なのかな?と疑いました。けれどお客様の出した金額はしっかり高級店。無理をしてでも風俗を呼びたい人はたくさんいるのかも知れません。

マッサージをして、性感プレイにはいります。

「ねぇ、入れていい?」

お、きたきた。みんな1度は言ってみるやつです。でもこんなのは慣れっこなのです。

「だ〜めっ!もぉ〜、○○さん超エッチだなぁ〜!」

そう言いながらケラケラ笑い、これ以上の会話を避けるために乳首を舐めちぎる、これが私のスタイルでした。

「ダメかぁ〜…あっ、、、あっ、、」

彼はしっかりそのスタイルにハマってくれました。

 

1件目の仕事を無事に終え、事務所に戻ります。ドライバーさんにお腹が空いたからコンビニに寄りたいと伝えると

「ここの店、働いてる途中には食うなって言われるらしいねんな…腹が出るからとかが理由らしいねんけど、バレへんように、車で食べるんで」

と言われてびっくり。気にせずおにぎりと、からあげくんを食べました。腹が減る方が接客の品質下がるので。

 

事務所に戻ると、ほかの女の子がいました。

高級店の子はみんな可愛いと思っていましたが、そんなことはありませんでした。

みんな細いか、むちっとしたエロさのある体つきで、顔は普通か、整形しまくっている不自然な顔が多かったのです。確かに美人もいます。けれど、全員では無いことが、私には驚きであり、私が採用されたことを納得する理由にもなりました。

 

2件目の仕事が入りました。

向かったのは超一等地の超高級マンション。

玄関はルブタンが10足以上並んでいて(成金系かぁ〜…)と思いながら入室。金持ちって感じのリビングには、ハイブランドのショッパーが山ほど置いてあり、服もカバンも、キーホルダーでさえも10万を切る物を見つけることが難しいような部屋でした。家賃は100万を超えると思います。

そこに出てきたのは黒光りのマッチョ35歳。プライドが高そうな自信家でした。

一応「えぇ〜!かっこいい〜!」と言いながら筋肉を撫で回しました。

いつも通りプレイを開始し、ベッドでマッサージ。

「マッサージもうええから、エロい事せぇへん?」

出た。慣れっこです。

「え〜!今から超エロいマッサージするのにぃ〜?!あたし○○さんの筋肉撫で回したいし、もうちょっと触らせて〜!」

ここで会話から逃げるために背中を舐める。この人はいやな客だな、絶対マッサージ時間を長く持たねば、そう思いましたが、マッサージを引き伸ばすにも限界があり、性感プレイが始まります。

「俺に触られたら気持ちいい?」

「やばい…気持ちよすぎ…」

恥ずかしそうに、目を合わせずに言います。心の中ではアホか?と思っています。でもそれを相手に悟られてはいけません。めいっぱい感じている、本気で気持ちいいと思わせないといけません。必死です。受け身(と言っても乳首触られる程度ですが)は気持ち悪すぎるので早く終わらせるべく、体制を変えました。

キスをされないために乳首を舐め、手こきをしました。彼は手こきではイにそうにありませんでした。

「フェラしてや」

「入れていい?」

全部笑ってかわします。慣れっこです。

「俺、入れなイかれへんねん」

みんなそう言います。慣れっこです。

「なぁ、入れなイかれへん、入れていい?」

「ダメ〜!」

笑いながら言いました。でも勝手に体制を変えられてしまい、彼はゴムをつけ始めました。

「ダメダメ!ほんとにダメ!」

笑いながらもしっかり相手のお腹を手で押して避けました。人気のためには断り方も上手くなくてはなりません。相手を不快にさせないよう、可愛く断らないといけないのです。でも、それがダメだったのです。

「いいやんか」

彼は無理やり押し当ててきました。なかなか入りません。彼は私のあそこを触り

「全然濡れてへんやん…」

と言いながらもそれを無視して入れました。ものすごく痛いし、気持ち悪い。こんなに不愉快なのは初めてでした。生ぬるい感触と、鳥肌が立つ気持ち悪さが蛇のように、私の脚に絡みついていました。

ここまでされたら彼はお客様ではありません。店のルールに反しているのですから。

「ホントにやめてください」

無表情でそう言いました。彼は2プッシュで抜きました。そのあとは泣きたい気持ちを抑えてニコニコプレイをして、帰りも笑って帰りました。足には蛇がまとわりついたままでした。

 

帰りの車に乗った瞬間、彼氏の顔が浮かびました。

「ごめんね」

そうLINEしました。

隠し事は苦手です。振られると思いました。生きている意味を失いました。ただでさえ風俗嬢で汚れているのに、さらに汚れた女を愛してもらえるなんて思えませんでした。

スカウトの吉田くんにもLINEをしました。

「すみません、この店やめます」

吉田くんはすぐ返事をくれました。終わってから説明すると返しました。

車の中で涙をこらえ、まとわりつく蛇の気持ち悪さにも耐えました。感触はしっかり残ったまま。こんなに少しだけなのに、しかも客なのにこんなに怖いなんて、思いもしませんでした。本当にレイプされた子はどれだけ怖いか、きっと私には想像出来ないほどなのでしょう。

 

事務所に戻りました。店長に「無理やり入れられたんですけど」と言いました。

「で?次の仕事行ける?予約あんねんけど」

「行きます」

それ以外に答えはありません。だって仕事なんだもん。

本当は泣きたい。風俗1年してきても、こんなこと初めて。全然慣れっこじゃない。意味わかんない。彼氏に振られるかも。女の子が困った時に助けてくれるのはお店の仕事じゃないの?今までの店はやばいお客さんいたらお店が助けてくれたのに、なんで?

全部抑えました。仕事なので。

 

時計は深夜1時をまわっていました。

彼からLINEが入りました。

「どしたん?とりあえず今から行くね」

私たちの距離は100キロ以上ありますが、彼は行くと言ったら来る人でした。

何も伝えていないのに察されたことがショックでした。でも、彼に会えるのなら、あと1件頑張れる気がしました。

 

3件目の仕事に向かいました。

普通のファミリー向けマンションでした。28くらいの普通の男性。

普通にプレイしました。辞めることを決めていたので、それなりに手抜きだったと思います。

「なぁ、いれるで?」

彼は当たり前のように言い、ゴムをはめ始めました。

「ホンマにダメ」

強めに言いました。50センチほど離れました。

「入れていい?ちょっとやったらええやん」

「何回お願いしてもダメ!する気ないよ」

強く言いました。さっきのことがあったので、自分を守るのに必死です。店のことも、仕事のことも知りません。

彼は「えー…そんなことある?」とボヤきました。

帰り際に「俺ここの店、3日連続呼んでるねんけど、断られたん初めてやわ。みんなしてくれる店やのに」と言われました。

なるほどね。だからみんな「入れていい?」って聞くんだ、やっとわかりました。

 

バカみたいです。

私はどんなお店でもルールを守ってやってきました。なるほどね。大阪はそんなお店ばかりなのに、普通にルール守ろうとしてバカみたいです。

 

帰りの車で涙があふれました。

とりあえず吉田くんに電話して、あったことを説明しました。吉田くんはほんとに良いスカウトで、しっかり対応してくれました。

「店とは直接連絡取りたくないし、顔も見たくない。無理やり入れられたのに、守ってくれないなんて酷い」

「お店にしっかり聞いてみます。とりあえず退店しましょう。落ち着いたら話しましょう」

この時、スカウトが吉田くんでよかったと思いました。

 

ドライバーさんは黙ってティッシュを渡してくれました。

涙が止まりませんでした。ワンワン泣きました。

彼氏から「3時には着く」というLINEが来ました。さっきまでは会えるのが嬉しかったのに、今はあって何をどう伝えたらいいのか分からず、辛い気持ちしかありませんでした。生きているのがつらいし、たかが2プッシュなのに、自分の腟内に生々しくその感触が残っている事に吐き気がしました。

 

家に帰ると彼はもう家のそばにいました。

何も言わず抱きしめてくれました。それが悲しかった。今は凄く汚れているから、ちゃんとシャワーを浴びたいという気持ちしかありませんでした。

「汚いから」

「汚くないよ」

彼はずっと優しかった。

ビービー泣く私を何も言わずに抱きしめてくれました。

 

この後彼の家に一緒に帰って、2人で寝ました。車の中でも落ち込んでいる私を、ずっとよしよししてくれました。何があったかを泣きながら話すと、悲しそうな顔も、気持ち悪そうな顔もせず、私を心配してくれました。彼だってきっと辛かったのに、そんなことは一言も言わず、私の辛さだけを受け入れてくれました。

 

後日スカウトから

「店は無理やり入れられたとか聞いてないし、もしそうならちゃんと話を聞きたいって言ってますよ」

と言われました。虚言癖のメンヘラかよ。

ついつい

「は?あたしちゃんと言いましたよ?絶対おかしいでしょ!泣かずに言ったからそんな大したことないって思っただけじゃないですか!?」

と吉田くんにキレてしまい

「すみません、吉田さんは何も悪くないのに…」

と謝りました。吉田くんは苦笑いで

「そうですね…」

と言ったあと

「でも僕からもちゃんと伝えておきますし、こういうことをちゃんと僕に言ってくれてよかったです。僕、キャバばっか紹介してきたんで、風俗経験あんまなくて、今後に生かします!」

と言ってくれました。新宿スワンかよ。吉田くんでよかったと思いました。

 

彼と私の間で、この日の話はなんとなくタブーになっています。良い思い出では無いですからね。

けれど、彼のことを本当に信じられるのはこの日があったからです。

「汚くないよ」

と言って抱きしめてくれたからです。

 

その次の日からの私たちは普通でした。

近くで買い物をして、よく行くラーメン屋に行ったり、居酒屋に行ったり。何も変わりませんでした。

それが幸せです。今も幸せです。

あたしの写真を撮ってくれること、一緒に美味しいご飯を食べに行くこと、あたしがご飯を作る度に写真を撮って「嫁やん!」って言いながらご飯3合平らげること、料理なんか出来ないのにウインナーと卵を焼いて朝ごはんみたいな晩御飯を作ってくれること、全部幸せです。

たくさんお金はいりません。彼がいるだけでこんなに幸せなのです。

特別なこともいりません。こんな毎日が続いて欲しいだけです。

 

辛い時は絶対に助けてくれる彼と、ずっと一緒にいられますように。2年後には、一緒に住んで「お米よく食べるせいで、今月カツカツじゃん!」なんて笑っていたいな。

もし彼に辛いことがあったら、その辛さを受け止められる人になりたいな、それが今の気持ちです。