あたしの飯を食え
元彼と付き合ったばかりの頃、ピクニックに行くことになった。
ピクニックならば、と弁当を作った。
私は可愛いご飯を作るのが苦手で、茶色い食べ物ばかり作っていたが、この時は黒ごまを目に見立てて動物の顔なんかを作っていた。「お弁当 好きな具」で、検索した。要はかなり張り切っていた。
ピクニック当日、「はいこれ」と弁当を広げると
「僕、人が作ったもの食べられへんねん」
と言われた。
付き合いたてだったこともあり
「あ、そっか」
と言って終わらせた。
彼は、一応ふたくちほど食べていた。
家に帰って泣いた。お弁当を持って帰ってきてしまっていた。
中途半端に食べたせいで、悲しく崩れていたし、動物の顔は散り散りだった。
食べる気がしなくて辛かった。近所に住んでる友達に食べてもらった。
「美味しいよ」
と言ってくれた。余計泣いた。
「もう料理は作らない」と彼に話した。
「いやちゃんうねん、あれは僕が悪いよな。今やったら頑張ったらプーちゃんのご飯食べれるねん!」
アホみたいな顔で言っていた。
あたしの作る飯は、頑張らなきゃ食えないような飯なんだろうか。
その後、彼に弁当を作って渡したことがある。
「チンして泣きながら食べた」
「お母さんに心配されながら食べた」
という報告が入った。
なぜ報告した?
出稼ぎや、店泊で家に帰らない日が続く前は毎日3食作っていた。
それなりに料理はできたはずだった。
彼と別れたあと「あたしの飯が食える男」というのが、付き合う条件に加わった。
色々あって、ゴリラみたいな今の彼氏と付き合った。とにくデカくて、よく食べる。食べ過ぎなくらい食べる男だ。
最初彼に興味が無さすぎたので、初めて作ったご飯が何だったかも覚えていないが、「作ろうか?」と提案しただけで
「え?!いいの?!作ってくれんの?!」
みたいに大喜びされ、
「ウンマ!」
からの
「おかわり!」
だったのは覚えている。
それから何度か作っているが
「今日は味濃い…」
「白ワインがキツい…」
などと数回不評だったご飯はあったものの、私のご飯は基本的にはペロリと平らげられていた。
先日雑に作った親子丼も
「え?!うますぎやん?!」
「今まで食べた中で1番美味い!歴代超えてきてるで!」
とハイテンションで食べていた。
「彼氏がね、あたしが作ったご飯を美味しそうに食べてくれるんよね」
と惚気けると「当たり前やん」みたいな返しをされるが、私にとってそれはめちゃくちゃ幸せで、今日も寝る前に思い出してニヤニヤするくらいの出来事だ。
今日も多分、ニヤニヤしちゃう。